予算の関係でプロジェクトが立ち上がらない

もともと50個程もある多数のMS AccessベースのC/Sシステムを、徐々にJava EEベースのWebシステムに作り変えるという前提でフレームワークミドルウェアの選定をサポートする役割で参加しているプロジェクトがあるのですが、予算の承認が下りずになかなかプロジェクトの方向性が決まりません。もともとシステムのWeb化のトリガーになっているのが、収益向上とかユーザビリティーの向上といった積極的な理由からでなく、マイクロソフト製品のEOSLに伴うバージョンアップの必要性に、セキュリティ向上とITスタンダード準拠という後からとってつけたような理由を付加して提案している案件らしいので、昨今の厳しい経済状況の中で予算が簡単に取れないのはある意味当たり前かもしれません。お客さんとしても今後何年もかけて何十億という大金を投資するのであれば、投資を超えるリターンがなければなりません。元請の上流SEのチームではもともと

  • 採算度外視で完全にJavaで作り直し
  • MS製品の単純バージョンアップで延命

の2案を提案していたのですが、システム部側とユーザー部側で予算と機能性の間で、どちらの方向で進めるかなかなか決着が付かない様子です。
全部Java化とか、単純バージョンアップとかのデジタル思考しかできないのがそもそも問題なのでしょう。そんなに大量のシステムがあるのですから、まずは業務上投資効果のあるなしで色分けし、段階的にWeb化するとか、サービス化して既存システムを活用しつつ、徐々にシステム間の連携を高めていくといったようなシナリオが描けないのかと思います。本来こういうところはエンタープライズアーキテクトの仕事だと思うのですが、特定の製品や開発手法を売りつけるような自称アーキテクトは世の中にたくさんいても、会社の業務システムの将来的なロードマップを描けるような役割の人に今まであまり出会ったことがありません。私の業務上そういう雲の上の存在とは接触する機会がないだけかもしれないですが。
会社によって上流と下流の役割分担がはっきり分かれていることもありますが、日本においてはプログラマーとしてオブジェクト指向やモジュール化設計などを十分に経験した後、上流工程におけるアーキテクトになるというキャリアの人が非常に少ないことも問題なのではないかと思います。相当のプログラミング経験がないと複数システム間の効率的な連携やレイヤー化・サービス化などができるわけもないのではないでしょうか。だから、客先でも本当に意味があるのかと思うような基盤の開発をしていたり、何年もかけてUMLドメインモデリングしていたり、ベンダーの営業の言うなりにSOAクラウドといった「最新」のトレンドの採用に躍起になっていたりと、方向性がいまいちよくわからないところが多いように思います。こういう状況で、日々待ち状態になっていると、下流工程のアプリケーションアーキテクト、プログラマーの立場の限界というか、無力感を覚えます。先日下流が軽視されていると書きましたが、やはり、前提として上流のエンジニアがしっかりと考えられないと仕事が進みませんね。