アナリシスパターン - 非常にとっつきにくいが読めば読むほどに良さがわかる名著
アナリシスパターン―再利用可能なオブジェクトモデル (Object Technology Series)
- 作者: マーチンファウラー,Martin Fowler,堀内一,友野晶夫,児玉公信,大脇文雄
- 出版社/メーカー: ピアソンエデュケーション
- 発売日: 2002/04
- メディア: 単行本
- 購入: 7人 クリック: 89回
- この商品を含むブログ (70件) を見る
Analysis Patterns: Reusable Object Models (Addison-Wesley Object Technology Series)
- 作者: Martin Fowler
- 出版社/メーカー: Addison-Wesley Professional
- 発売日: 1996/10/09
- メディア: ハードカバー
- 購入: 1人 クリック: 3回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
あと、この本に出てくる分析モデルやパターンは、表面上特定の業務分野を題材として取り上げているのですが、そこに出てくるパターンは他の業務であっても汎用的に使えるアイデアになっているものが多いというところも見逃してしまいがちですが大切なポイントかと思います。たとえば、本書ではデリバティブ商品のストラドル*1の例を取り上げて、Productパターンというパターンが紹介されていますが、これは、顧客に対してひとつのProductとして組み合わされて取引される場合でも、裏のトレーダーにとってはプットとコールの別々のContractの集合としてばらばらに扱った方がよいという考え方です。この考え方は、FX取引のOCOやIF-DONEのような複合注文を扱う場合や、金融以外でも商品をセット販売するような場合には実際多くのシステムで幅広く応用できる考え方であると思います。このパターンを知らないと明細を独立したエンティティクラスとして抽出する発想に至ることがなかなか困難なのではと思います。
私も最初は本書の内容や本当のよさがなかなか理解できず、半端な理解のまま長いこと本棚に放置していたのですが、最近になって再度読み返してみると、あのシステムではこういう設計にしておけばよかったと反省される箇所が多くあり、あらためて本当によい本だと感心させられます。とくにJPAなどの技術によりPOJOを使ってO/Rマッピングが気軽に使えるようになった今こそ、再度読み直してみるべき価値のある本だと思います。上流から下流までユーザー(ドメイン専門家)やビジネスアナリシスト、プログラマーが共通のドメインモデルに従って会話できるようになるのが私の理想で、そういうことがいつかしたいのであえてJava EE開発などという泥臭い開発の世界で仕事を続けているのですが、今のところ、なかなかそういうファウラーのような仕事ができるチャンスは少ないですね。
*1:同一銘柄(instrument)に対して同額の売り(プット)と買い(コール)のオプションを同時に購入する取引