ソフトウェアアーキテクトほど魅力的な職業はない!?(アメリカでは)

ちょっと興味深い記事を見つけました。
大きく違う日米でのSEに対するイメージ | 日経 xTECH(クロステック)
アメリカでは人気投票でバービー人形の新しい職業にITエンジニアが選ばれたり(プログラマーのバービー*1、ソフトウェアアーキテクトがアンケートによるランキングでももっとも人気の高い職業となっているとの事です。(Best Jobs in America 2010 - Top 100 - Money Magazine on CNNMoney.com*2つまり、子供にとっても実際に働いている大人にとっても、IT技術者は人気の高い職業となっているみたいです。アメリカでは日本と違ってIT技術者の地位が高いという話は以前からなんとなく聞いていたのですが、実際に職業の人気度がここまで正反対であるとはちょっと驚きました。平均年収は1000万程度らしいので、年収だけからするとそれほど極端にセレブというわけではないようですが、仕事に対する満足度(QOL)が高いようなので、総合的にみて「勝ち組」の職業ということになるのでしょう。
それに対して、日本においては、3Kとか7Kとか言われて学生から最も敬遠される職業になっているみたいですし、収入や労働時間などの環境も劣悪で、努力や才能も報われない、将来の夢も希望も持てないという悲観的な意見が多いようです。*3そういう事実を知るとアメリカ人はうらやましいという気持ちももちろんあるのですが、IT技術やプログラミングという仕事自体の魅力がなくなってしまったわけでは決してないということで、私としてはちょっと安心させられたというところの方が大きかったです。
ところで、普段仕事をしているとそこまで危機的ということに気づきにくいですが、外国の状況と比較すると明らかに日本のIT業界は問題が山積している、崩壊寸前の危機的な状況であるのではないかと思います。技術の空洞化や偽装請負などのコンプライアンス違反などの構造上の問題も深刻で、生産性などの技術力でも大きな差をつけられているようですし。こういった問題は一部の負け組プログラマーブラック会社の問題であるとして単に無視するというわけにはいかないでしょう。そういう事実を前にすると、現在のIT業界の状況は幕末の日本の危機的な状況と非常に似ているところがあるなと思えるところがあります。ちょうど、NHK大河ドラマの竜馬伝も大政奉還に向けていよいよクライマックスを迎えようとしているところなのですが、ドラマの影響もあってか、最近ますますそのように感じてしまいますね。幕府とか諸大名などの旧勢力をSIerに、クラウドなどの新技術はちょうど黒船にたとえることができます。それでは、大政奉還で政権をお返しすることになった天皇に相当するのは何かということになるのですが、プログラマーの私としてはそれこそ「プログラミング技術」そのものなのではと信じたいです。(私の文章力のなさゆえ、誤解を与えるといけませんが、プログラミングがすべてと言いたいわけではもちろんありません。)どんな優れたハードやアイデアがあっても、それを実現するソフトウェアをまともに作成する技術がなかったらそれらは単に絵に描いた餅に過ぎないですから。
幕末の危機を乗り越え、時代を大きく動かした立役者となったのは竜馬をはじめとする下級武士たちだったのですから、われわれ下流プログラマーも業界が悪いといって甘えているだけではだめですね。竜馬や弥太郎が現代のプログラマーだったらいったいどのような策でこの日本のIT業界の危機を乗り切ろうとするでしょうか?竜馬が土佐の殿様を動かして大政奉還を達成したように、IT業界のお偉いさん達に問題に気づいてもらうことはできないのでしょうか。
今のところ私にはまったく想像もできませんが、近い将来何らかの形で日本のIT業界は明治維新にも匹敵する構造上大変革を迫られることは確実だと思います。そうでなくては日本のIT産業やそれに支えられる業務そのものが競争力を失ってつぶれてしまうでしょうから。ソフトウェア開発は下流工程だけでなく企画から設計まで全部外国人が担当することになってしまうかもしれません。少なくとも、本来高度な知識や専門性の求められるプログラマーが最底辺であり、無知で不勉強なSE(ここでは高度な業務知識やモデリング力を持つビジネスアナリシストやアーキテクトを含まない)や顧客によってコントロールされるというゆがんだ構造(派遣PG時代の思い出 - Togetter)を正すことが絶対に必要であると思います。本来プログラマーは医者や弁護士と同じように「先生」と呼ばれて尊敬されるような立場になってもおかしくないのであり、また、逆にプロのプログラマーとしてやっていくのであれば、自助努力によってスキル向上に努める責任があります。そういう努力する気のないプログラマーやSEは職を失っても仕方がありません。欧米など多くの国ではプログラマーソフトウェア工学を学んで当然、努力して勉強し、実力のあるプログラマーが高く評価されるという健全な社会が既に実現できているのですから、日本のIT業界のゆがんだ構造を正していくことができないわけはないと思うのですけれど。プログラマーが技術者として思う存分に実力を発揮でき、(収入以前に、プログラマーが最も幸せに感じるところかと思います。)、それによってIT技術を使うあらゆるユーザーが恩恵を受ける、「皆が笑ろうて暮らせる国」を作れないわけがないと思います。

*1:インターネット上の投票なのでもともとコンピュータ好きの票が影響している可能性があり、必ずしも女の子の人気のトップとというわけではないようです。

*2:2009年の調査ではSEがトップだったが2010年では49位と大きく順位を下げている。詳細な順位は結構流動的なので注意。

*3:日本でも高校生くらいまではSEやプログラマーを目指そうと考えている子も結構いるみたいですけれど。(http://benesse.jp/blog/20100422/p1_2.html