上流の壁?

達人プログラマーを目指すための素質 - 達人プログラマーを目指してで、PGの社会的地位の低さについて言及したのですが、ステレオタイプな上流コンサルと思われる方から、以下のようなコメントをいただきました。

現在の貨幣経済において、情報システムサービス業(SIer)におけるPGはそこまでの価値なんだと受け止めるべきかと。
実際の話、SIerにおいては優秀なPGが沢山いるより、大型案件を扱えるPMが沢山居る方が、より儲けやすいでしょう。

あと、別にPGだけが頑張って勉強してるわけではないです。
上流コンサルやITアーキテクトと呼ばれる人たちも勉強はしています、平均をとればPGたちよりも勉強はしてるでしょう。
営業だって馬鹿ではありません、刺しつ刺されつの世界でなんとかプロダクトを売っているんです。

貨幣経済において、付加価値の高くないことを勉強しても付加価値は低いままです。
「清掃作業において俺は誰にも負けないほど勉強しているが、なぜ給料は低いんだ!?」
と叫んでるのを聞いてあなたは何を思いますか?

要するにこの人はプログラミング作業を清掃作業に類する単純労働作業と捉えており、それゆえ付加価値の低い仕事だからそれなりの地位と収入なのは妥当であると考えておられるようです。(この方は年収1000万近くも稼ぐかなりの高給取りの方のようです。)もちろん、すべての上流コンサル、上流のITアーキテクトの方が全員この方と同様な考え方をされているわけではないと思いますが、割合的にはこのような考え方をされる方が多いのでしょうか?もし、そうだとすると上流のエンジニアの方と私のようなコードを書く下流のエンジニアとの間には容易には崩せない厚い壁が存在していることになりますね。
私の考えでは、マーチンファウラーのようにコード上の設計もできる人が、上流のアーキテクチャーやシステムの要件を考えるというのが理想的であると考えています。そうすることにより、オブジェクト指向的な発想で拡張性や再利用性の高いシステム設計、本当の意味で付加価値の高い分析や設計というのが可能になると思います。逆に、OOPとかデザインパターンなどプログラミング上の設計技法を理解していないような人が高給取りの上流エンジニアの立場になって、SOAなどの手法を活用して本当に有効な設計ができるのか疑問を感じてしまいます。
20年くらい前からシステム開発のアウトソース化が急激に進み、SIerという会社が生まれたと聞いていますが、不幸なことに、この時期はちょうどオブジェクト指向プログラミングやC/S環境などの普及が本格的に始まった時期と見事に一致しています。SIerのゼネコン化の問題もあり、そうした中でオブジェクト指向などの下流の技術革新をまったく理解しない上流専門の会社と立場の低い下流の会社に分断されてしまいました。立場の高い上流の人は新しい技術を知らず、逆に新しい技術を正しく使う能力のあるPGの立場が必要以上に低く、付加価値の高いポジションで仕事をする機会が極端に少ないというのが現状の日本のIT業界なのかと思いました。
やはり、上流と下流を隔てる壁を今後何とかして崩さないと先に進めない気がしました。自分がプログラミングを中心とした仕事をしているということはありますが、やはり、基本的にはPGの地位をもっと向上させ、プログラミングの分かる人がもっと上流の付加価値の高い仕事に参加できるような環境を作っていくことが大切なのではないかと思います。アジャイルのような開発モデルがもっと浸透し、ユーザー企業も直接システム開発や運用をコントロールするようになれば、たちどころに、この「壁」を崩すことは可能かとも思います。冷戦の終結によりベルリンの壁も一気に崩壊したのです。もっと多くの人がこの問題に気づいて、改革することを望めば、ちょっと馬鹿げた上流の壁を崩すことは決して不可能なことではありません。