ロバート・カッツ教授のスキル3要素モデルを単純にプログラマーのキャリアパスに当てはめてよいのか?

ロバート・カッツ教授のスキル3要素という理論があります。
スキルとは何か~あなたは人に説明できますか?:Road To IT-Engineer / ITエンジニアの生きる道:エンジニアライフ
私も会社の研修で何度が耳にした理論ですが、仕事のスキルは以下の3要素から構成され、より上級の職種ほど専門能力の割合が小さくなり、逆に対人能力や意思決定能力が求められるようになるという理論です。

  • Technical Skill(専門能力)
  • Human Skill(対人関係能力)
  • Conceptual Skill(意思決定能力)

これは、一般的なサラリーマンのキャリアパスを考えるのであれば、非常にもっともな事だと思います。営業職であれば、専門能力に関しては(新商品や業界の動向などの勉強等は継続的にあるにせよ)ほぼ一定であり、あとはヒューマンスキルをいかに向上させるかです。さらに部長などの管理職になれば、チャンスをものにする意思決定能力が求められるようになります。また、技術職でもアーキテクトなどの上位職を務めるのであれば、専門知識以外のスキルが重要ですし、プログラマーでも成功者と言われる人はコミュニティーを通して幅広い人的なネットワークを構築しているのですから対人能力は重要なことは言うまでもありません。しかし、この理論のモデルを、プログラマーやSEに対して単純に当てはめてよいものなのでしょうか?
私はこの理論における専門能力の比重に関する部分が曲解されて、多くの企業の中にあまりにも深く浸透し過ぎているために、プログラマーとしての専門性が軽視され、技術職の低い評価につながっているのではないかとも考えてしまいます。このような専門知識を軽視する考え方により、SE、PMとステップアップするにしたがって技術の勉強をおろそかにしてしまい、結果として高給取りの上位職ほど素人同然の時代遅れの知識しか持っていないというゆがんだ構造になってしまうのだと思います。結果として意思決定力のある立場の人が不適切な設計しかできず、知識のそこそこある若手の下流プログラマーも能力を十分発揮できないということになります。
本来営業などの一般職に対する理論を高度な知識を使いこなすことが要求されるプログラマーに対してそのまま適用するのはいかがなものでしょうか。医者やバイオリニスト、作家などの専門的な職業に同じモデルを適用することが難しいのと同様に、無理があるのではないかと思います。特に、この分野では技術の革新が著しく、本の5年前の常識が時代遅れとなってまったく通用しない世界です。プログラマーが初級プログラマーから中級プログラマーへ、そして、達人プログラマーへと成長するキャリアパスが仮に存在するのであれば、大量の書籍やネットの情報から膨大な情報を学んで使いこなす必要がある専門知識の割合に対して、意思決定やコミュニケーションスキルなどは持って生まれた素質と業務経験から自然に得られる緩やかな成長で十分であり、相対的な割合でいくと比率が小さくなっていくというように、カッツ理論とはむしろ逆のモデルが正しいのではないかと思いますがいかがでしょうか?