日本のユーザー企業は忍者のようなプログラマーをもっと登用して重用すべきでは
あの記事から一年、ひがやすを氏が以下のエントリーで、プログラマーとして、新しいサービスを作ることの難しさについて書かれています。
僕と君とSIerの生きる道 - yvsu pron. yas
確かに私自身は、サービスを作る側に回った(まだISIDにいるけど、ベンチャーで働いているようなものです)のですが、身を持って面白いサービスを作る難しさも経験しました。
面白いサービスを作るのはほんとうに難しい。その後、マネタイズにも成功するのはさらに難しい。サービスを作る側に回って成功するのはほんの人握りの人なんです。
もともと一年前におっしゃっていたことは、SIerのビジネスに将来性はないから優秀なプログラマーは自分でサービスを作る側に回らなくてはならないし、単によいコードを作れるだけでなくて、自分からアイデアを考えられるようにならなくてはならないということだったかと思います。一年前この記事を読んだときは、私としてはかなり衝撃を受けました。一人前のプログラマーとして認められるには、もはや単にきれいなコードを書く技術やフレームワークやミドルの知識だけでは不十分なのであり、自分からビジネスを創り上げるアイデアがなくてはならず、単に勉強して技術力を磨くというだけでは不足であるということのように思われたからです。
どうしても、停滞気味なSI業界の中でエンジニアとして働いていると、ビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグのように新しい時代を切り開いて成功者となったプログラマーにあこがれることは自然なことですし、プログラマーとして大きな目標を持って頑張るということは悪いことではありません。しかしながら、現実問題として、そういう成功者に誰もが簡単になれるわけではないですよね。
大きな目標を立てることは立派なことだけれども、これは、戦国時代に例えるならば、すべての武士に対して、信長や秀吉を目指せといっているのと同じくらいに難しいことのように思われます。しかし、一方で、政治の表舞台には登場しなくても、裏方として活躍した軍師や忍者として活躍したような人もたくさんいたと思われます。そういう忍者たちは、表向きの身分こそ低くても、自分の剣術や諜報スキルを磨くことで、大名に信頼されて、戦略上重要なプロジェクトを任されていたのではないでしょうか。
基本的に、信長の野望のようなシミュレーションゲームにおいては、大名のようなトップに立つ人はすべての能力において優秀でなくては務まらないと思いますが、忍者や軍師のタイプは智謀や武力など一部の能力に特化したスペシャリストとして登場します。私としては、多くのプログラマーは大名タイプよりも、むしろこうした忍者タイプを目指した方がよいのではないかと思うのですよね。
忍者はスペシャリストですが、大名のそばにいて、重要なプロジェクトを引き受けます。*1これは、現状のSI業界における開発が大部分百姓から臨時でかき集めたような傭兵による集団戦法に頼っているのとは対照的です。
Amazonではエンジニアのことを忍者と呼ぶことがありますが、単に外国人の興味を引くということだけでなく、この呼び方はエンジニアの職務を表現する上で非常にマッチしていると考えます。*2
取扱商品数の拡充等で成長を続けるオンラインストアだけでなく、最先端のクラウド技術を活かしたAmazon Web Services(AWS)の展開と、さらなる挑戦を続けるAmazon。その影の存在でありながら凄いことをするという思いを込め、Amazonのエンジニアは自分達を忍者(Ninja)と呼びます。
Amazon エンジニアキャリア採用サイト
army of traveling Code Ninjas
AWS、プライム、キンドル、モバイルなどそれぞれの戦略を担当するチームの中で、エンジニアが忍者のように裏方として活躍しています。これらの忍者たちは、必ずしも有名人とか大金持ちというわけではないですが、スキルを活かして、ビジネスの戦略を遂行する上で重要な役割を担っています。
もともと、忍者というものを生み出した国でありながら、日本のSI業界においては忍者のようにプログラマーが重用されることが少ないのが不思議なくらいです。大量の傭兵軍団からなる集団戦法を使って数で勝負というだけではなく、少数精鋭のメンバーで戦略的に勝つというようなやり方が、日本のユーザー企業でももっとポピュラーになれば、日本でも上級プログラマーの活躍する場所がもっと増えるのではないかと思いますし、こうした忍者衆をそばに抱えておけば、ユーザー企業にとってもITを本当にビジネスで活用する上で有効なのではないかと思いますがいかがでしょうか。